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【2】 彼女から彼女への手紙

 人生、何がどういう結果を招くかなんて、判らないものよね。
 私にとってのそれは、交通事故。
 小学校6年の時に交通事故にあって、入院するはめになった事だった。
 あなたとは…真綾とはその時に出会った。
 同い年だけど、私よりあなたははるかに大人で…不思議な子だと感じたのは、今でも覚えている。
 「大人」ってのは、見た目とか、知識が多いとかそういうのじゃなくって、感覚が大人だったの。
 どこか、悟ったような雰囲気の真綾は、小児科病棟に居る大勢の子どもとは違った。そんなあなたに私はひかれたの。
 といっても、私が入院していたのは6人部屋で、あなたは個室に居たから、余り話すことも無いまま私は退院してしまった。
 でも、一回だけ、二人で話したことがあったのよね。
 私が入院したのはちょうどお盆あたりで、お盆あたりの日は、人達で割りと元気な患者(?)は家に帰っちゃうのよね。
 私が居た六人部屋の人も全員帰っちゃって、誰も居ない病室は淋しくて、恐かった。
 誰もいない病室の雰囲気って、覚えてる?
 あの真っ白い、殺風景な箱の隅っこにぽつんと居る感じ。
 なのにどっか、人の気配を感じるの…。
 それは、患者の日用品が置いてあったりするせいもあるけど、普段のざわめきの欠片が残ってて、何とも言い難い雰囲気を生み出すの。怖くて、このまま違うところへ連れていかれそうで、誰でもいいから一緒に居てほしかた。
 そんな時、あなたが来てくれた。
 あなたはいつも開けっぱなしの大部屋のドアから、顔を覗かせて、「あなたも一人?」って言ったわよね。
 こちらに繋ぎとめてくれる誰かが来てくれて、本当に安心できた。
 私の気持ちを察したのか、それともあなたも同じ気持ちだったのか、今となっては判らないけど、「イヤだよね、みんな家に帰れるのに、帰れないなんて。それに誰もいない病室の雰囲気って、ヤな感じだしね。ねえ、外は星が綺麗だよ?ベランダに出ない?」
って言って微笑んで病室に入って来たの。
 私はあなたの誘いに喜んで、ベランダにスチールの椅子を出して夜空を見ながら話をしたわね。
 あなたは常に点滴をして、私は頭にぐるぐる包帯を巻いて、まるで仮装パーティみたいだったの、覚えてる?
 点滴の液体の色は透明だけど、夜空の星を反射して、キラキラ光って、不謹慎かもしれないけど綺麗って思って見ていたわ。
 実際には星なんて見えなくて、猫の目のような月が暗い夜空にぽっかりと浮かんでいた。
「残念、今の時期なら、流星だって見れるのに」ってあなたはがっかりしていた。 
私は、星座ととかには興味が無かったけれど、あなたの詳しさには驚かされたわ。
 獅子座流星群より、古い流星のナントカって言う流星群の方が沢山の流れ星が見えて、毎年8月6〜13日ごろ見える事や、
グランドクロスが不吉と言われるのは星占いでの事だと言うこと。
 本当、あの時は何でそんなに詳しいのか、不思議に思ったわ。
 そして、それ以上にあなたは月の事に詳しかった。
 まるで自分の家の庭を案内するように月の地名を話してくれた。
 静かの海・病いの沼・虹の入江・パブロフ・ニュートン…
 そしてあなたは月を仰ぎながらこう呟いた。。
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