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【4】 月への手紙

あれから、もう6年たったわ。 私はもうすぐ大学受験なのよ。
 この手紙を書いてるのも、予備校の自習室だったりするの。
 大学受験をするるのよ。私達、もうそんな年になったの。
 時々思うの。 「なんで私は生きてるんだろう」って… 。あなたはもう居ないのに、私は生きているのよ?
 なんだかおかしな気持ちになるの。あなたの人生は12年で閉じたのに、私はもうあなたより6年も余分に生きたわ。
 …あなたにもあるはずだった年月を、私は生きたの。
 これって、とても不思議な感覚なのよ。
 あるはずのものがそこにないの。隣にいたはずのあなたが居ない。それなのに時間は流れてく。
 私はこのまま、先へ進んでいいのか判らない。心の一部分が欠けた状態で、進んでいいのか判らない。
 それに…私は怖い。
 一日、一日、私は大人になっていく。確実に死に近づいているの。
 あの日の夜から、死は常に私の隣に居る。
 私も…そっちへ行きたい。月の家へ。
 私はまだ子どもかしら?
 それとも、もう大人?
 もう、微妙な年よね。
 でも、行きたい。そして、あなたに会いたい。
 また聞かせてよ、あなたの家や庭の月や星や宇宙の話し。
 そして、教えて。 
 子どもの魂が月へ行くのなら、大人の魂はどこへ行くのか。
 そうしたら私、きっと前へ進める。
 だからあなたに会いたい。
 でも、あなたに会いに行くと、先へ進めなくなるのよね。
 だから、届くかどうかも判らないけど、手紙を送るわ。
 届くかしら?月まで。

 地球の日本は最近、昼間はまだ暖かいけれど、風はもう秋の風。星も牽牛星や織女星が見えなくなって、秋の星座に変わりかけてる。
 季節が巡って、何度も星座が夜空を巡っても、それでも月は、あなたの家は変わらずに暗闇を照らすように輝き続けてる。
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